|     
                 この日は、午後に入らないうちから稜線上は雷に打たれていた。 
                 空は、不気味な明るさを保ちつつ、薄い雷雲を風に乗せ、 
                 山の旅人たちを不安な気持ちにさせていた。 
               自分も、慌てて白馬山荘まで歩を運び、雷鳴に耳を奪われていた。 
               「もう一発くるなー」 
               山荘の人はそう言って、「今日は小屋に泊まるんだろ?」と言った。 
                 
                 自分は、少し躊躇って「テント持ってきたんで…でも、天気が酷いようならお願いします」 
                 そう言って、山荘を後にした。 
               雨に打たれながら設営をし、テントの中でまどろんでいると、 
                 外でガヤガヤと人の騒ぐ声がする。 
               外に出てみると雲が切れて青空が覗いている…。 
                 小高いところに登ってみると、立山連峰が午後の陽に薄い影を浮かべていた…。 
                   
               |