決行日は、春一番の吹いた数日後…。
 風は当然ものすごい。
 樹々の間を縫って、吹き付けてくる風は、
 柔らかな雪の上に石庭のような風紋をつけ、
 ときには雪を舞い上げ、荒れ狂っている。

 トレースは、この風に掻き消され、
 行き先を教えてくれるのは、
 小枝にぶら下がっている頼りない赤テープだけ…。

 何度も何度も、雪に足をとられながら歩いていく。
 こんなペースでどこまで行けるのだろう?

 やがて、トレースのついている道に付く。
 ここでアイゼン装備…
 なんだけど、このアイゼンが、まったくの不良品で、
 歩いているとすぐにずれてしまう。
 数メートル歩いて直して、また数メートル歩いては直す…
 全く先に進まない…。

 とにかく…アイゼンが外れないようにバランスをとって歩くしかない…
 何のためのアイゼンやら…。