一昨年の秋、谷川岳に登った折、
 湯檜曽川の対岸に聳える一塊の山群を初めて拝した。

 その日は曇天で、天神尾根の上から耳二つを望むことは出来なかったが、
 北東方面だけは青空が覗いていて、この山群が格好良く見えた。

 地図を開いてみると、白毛門、朝日岳、笠ヶ岳とある。
 朝日、笠とは平凡な名前だが、白毛門とは奇異な名前である。

 そして、昨年の梅雨時、今度は上州武尊山に登った。
 この時も曇天だったものの、下山後林道を歩いていると、
 谷川方面が薄っすらと晴れてきて、残雪豊かな二つの山、
 谷川岳と白毛門の山群を望むことが出来た。

 このときふと、雪の豊富な頃に白毛門に登ってみたくなった。
 きっと谷川岳が良く見えるだろう…そう思って。

 おりよく、この年の年末の登山雑誌で白毛門が紹介された。
 その写真を見てますますこの山の展望に惹かれた。

 そして―4月。この年の初登山を行っていなかった自分は、
 Sさんを誘って残雪豊富なこの山に向かった。