雪は、急斜面を緩和する九十九折の夏道を閉ざし、
 逸る岳人たちの心を心臓破りへの直登へと誘う。

 

 ゼェゼェ…ズルッ…オッ…。
 しばらくすると、燧ケ岳が見える場所へと辿り着く。

  

 双耳峰がぼんやりと霞んだ晩春の空に浮かび上がる。
 しかし、この尾瀬を代表する名峰、ここから見ると何となく、不恰好で、威厳に欠く。
 かと言って、至仏から見ると逆にどっしりと威厳がありすぎて、
 どうも重苦しすぎる。
 やはり、尾瀬沼に影を落とす燧ケ岳が一番格好いい。
 やや小ぶりな山に見えるけれども、それがまたいい。
 山頂のいびつにゴツゴツとしているのも魁偉で見ごたえがある。

 ・・・そんなことを考えながらも、ここで一休憩。
 一口、水を口に含ませて、更に先に進む。
 やがて、木々の疎らになるところに至り、会津駒のゆったりとした稜線を、
 はっきりと眺められるところにまで着く。
 まるでスキー場…。